F1品種の原理と仕組み

F1品種は、特定の両親の交配によって種子を生産します。また、F1品種同士から種子を採っても、兄弟間でばらついてしまい品種として使い物になりません。このことは、かなり専門的になり、遺伝のことなので、少々、理解しにくいと思います。そこで、最もなじみのある人の血液型の遺伝を例に説明させていただきます。
動物でも植物でも、生物は、母親から受け継いだ遺伝子と父親から受け継いだ遺伝子、それぞれ2個を持っています。この2個が同じタイプのことをホモ接合、違うタイプのことをヘテロ接合といいます。両親がともにホモ接合のとき、例えば、図のように、母親がAA型、父親がBB型のとき、生まれる子供は必ずAB型になります。兄弟がいくら増えても皆AB型、均一な状態で、これがF1品種に相当します。
これに対し、F1品種に相当するAB型はヘテロ接合になり、AB型同士を交配すると、生まれてくる子供は、AA型、AB型、BB型の3種類に分かれます。兄弟間で個性が出ると、それはもう品種とはいえません。田んぼの中で、稲が1株ずつ個性を持った状態を想像してください。1株ずつ稔る時期が違うと、コンバインで一斉に収穫することはできません。品種には、人が利用することができる「均一性」が必要になります。


以上、1つの遺伝子に絞ってF1品種の原理を説明しました。実際には、1つの個体の中には無数の遺伝子が含まれており、同じ遺伝子の組合せをまねして作ることは不可能です。そのため、両親に当たるホモ接合の個体が流出しない限り、その品種の種子を生産することはできません。